今回は台湾製の漫画『ドラえもん』について語ります。1990年より前の台湾には著作権の概念がなく、版権を得ずに漫画『ドラえもん』の単行本が出版されていた時期がありました。いくつもの出版社が争って出版し、最高で同時に10社が同時期に出版していたこともあったとか。中には海賊版の海賊版なんていうものも。その中でも際立っていた出版社が青文出版社です。


正真正銘の藤子・F・不二雄がかいた『ドラえもん』の1作品をそのまま翻訳していたこともありますが、藤子の別作品を少々書き換えて『ドラえもん』作品にしてしまったり、果てはまるまる1本独自に創作することもありました。その手法は、藤子の漫画の中からいろいろなコマを模倣し、それを組み立てるというものです。それでも埋まらない箇所は、藤子の筆致を模倣して書き上げていたようです。

なお、現在の台湾では青文が正式な出版権を持っています。青文は『大長編ドラえもん』の独自作品も数本発表しており、そのひとつである「大雄精霊世界」(大雄=のび太)を藤子に見せたことがきっかけで、青文が日本の著作権者と契約を結ぶことになったそうです。(※2013/2/3補足:この噂は誤りでした。詳しくは私が発行した解説同人誌を参照)

青文が発行した『ドラえもん』の短編の単行本は、日本でいう「ぴっぱぴかコミックス」のような薄いもので、全236巻発行されました。当時の現地では「薄本」が一般的だったようで、ほかの出版社の単行本も薄本が多かったように思います。いちおう全236巻ですが、第228巻より『ドラえもん』ではない漫画の同時掲載も始めており、第231巻以降は『ドラえもん』を収録していません。

ちなみに、以上の書籍はすべて絶版です。版権未取得で出版していたので、再び出版されることもないでしょう。現在、青文は小学館の『ドラえもん』のさまざまな単行本(てんコミ全45巻、+全5巻など)を翻訳出版しています。

ここで、青文オリジナルの短編のひとつを紹介します。第161巻に収録している「水的感覚筆」という作品です。作中の中国語は日本語に訳しました(直訳、意訳を混ぜています。中国語を勉強中の身ですので、正しく和訳できていないセリフがある可能性があります)。
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(黃彬彬 編・絵『機器貓小叮噹 161』青文出版社、1988年12月12日完成、1988年12月19日出版)

大長編シリーズについても、機会があれば紹介したいと思います。