ドラえもん生誕百年前を記念する行事のひとつとして、9月24日から28日までの一週間、劉明昆夫妻の作品展が在籍校にて行われたそうです。なんと台製ドラの漫画原稿を堂々と展示し、しかもテレビで国内中にその模様が公開されていました。

http://gnn.gamer.com.tw/5/70825.html
http://www.nexttv.com.tw/news/realtime/lifestyle/10426420/
http://www.cmmun.com/article/201207/260.html

宣伝チラシにはさまざまなキャラクラーが描かれている中、ドラえもんだけ藤子プロ所有の肖像権に配慮して“墨塗り”状態になっているあたりが泣けてきます……。でもシルエットが全体のいいアクセントになっているので、これはこれでナイスなデザイン。

展示物は劉明昆による漫画の複製原稿や出版物、胡美嬌(奥さん)による立体造形など。
この展示会に関するテレビ報道では台製ドラについても説明しており、版権未許諾の二次創作を販売していた歴史を説明しつつも、自国の文化としてまぶしいく らいに誇らしげに解説しているあたりがいさぎよい……。この大学で教鞭をとっている劉明昆が学生へ向けて「模倣、学習を経て創作へ至る」という人生観を教 えるためでもあるとか。

といっても、決して彼らは肖像権侵害行為をよしとしているわけではありません。海賊版コミックスを長い年月売り続けてきたという事実を彼らは黒歴史として認識しており、まるで中二病まる出しの黒歴史ノートを「ああ、こんなイタイ時代もあったなー」として楽しんでいるように見えます。自分の黒歴史を棚に上げて相手を叩いちゃうどこかの国にも見習って欲し……いえ、なんでもありません。

そんなことよりも一部報道で劉氏を「台製ドラの父」として紹介しているんですが、それってどうなんでしょう。たしかに劉氏の代表作『のび太と精霊世界』は台製ドラ人気を牽引するかのような存在ですが、劉氏が青文社に入社する1989年より前から台製ドラは存在していますし、それに『のび太と精霊世界』が劉氏の単独作品であるかのように扱われてますが、あくまでアシスタントとして執筆に参加していただけのはずですし……。

まあ台製ドラを描いた人で名前が明らかになっているのは劉氏だけですから(社長の妹の名前を共同執筆者名に使うことが多かった)、劉氏をヒーローとして仕立て上げれば、いざというときに批判の矢面に立たせることができますし、青文社にとっても舵取りもしやすい……というのは考えすぎかもしれませんが。