青文出版社の『ドラえもん』第218巻に収録の作品「任務細胞本部」を和訳してみました。細胞を他人の体へ送り込んで、その人が持っている情報を得ることができるという道具が活躍するエピソードです。つまりこの道具はスパイをするための道具なわけです。


パパは「ぼくにスパイしろって!?」「安全なのか?」とたずねるパパに対し、「やるのはパパじゃなくて細胞だから」と返答するドラ。パパは倫理的な安全性を問うているんでしょうけど、どう見てもドラは道具使用者の保身が第一だと考えていますよね。パパも本当ならこんなことに加担したくはないでしょう。

まあ盗聴や盗撮のための道具をいろいろと使っているドラにしてみれば、スパイなどささいなことなのでしょう。たとえば「スパイ衛星」はあまりにたびたび使用するあまり、ほぼ“おなじみの道具”と化していますからね。

ドラはのび太が宿題の答えを盗もうとしたら怒るくせに、のび太から談合の事実を指摘された途端にうろたえる始末。やはり最初から保身第一だったようです。ドラェ……
ま、でもそういった人間くささが、ドラというキャラクラーをいっそう身近に感じさせてくれますよね。

細胞をスパイに派遣すると使用者が一時こん睡状態になったり、スパイ細胞が相手の頭から進入したり、頭への衝突時に電気を出したりしていますよね。脳が動かなくなると脳死状態になったり、脳細胞が情報を伝達するのに電気信号を出したりするそうですから、もしかするとスパイ細胞の正体は脳細胞なのかもしれません。一度に大量に進入しようとすると、誤って血管に入り込んでしまい、白血球の餌食になるのかもしれません。遺伝子情報を取得してしまうと性別が変わることもある……のかも。体積やカゼのことも気になりますが、きっと深く考えてはいけないのです。

もしFセンセがこのエピソードをかいていたら、読者に誤った知識を植えつけてはいけないと、正しい知識のもとにマンガをかいてくれていたところでしょう。もちろん青文ドラでも、正しい科学知識をもとにしている(と私が思っている)作品はいくつかあります。しかし残念なことにそうでない作品もたまにありますので、科学知識の真偽については読者が自分で判断するしかないですね。サンプルとして、正しい科学知識をもとにしている(と私が思っている)作品は今後和訳して紹介したいと思います。

今回はオマケとして表紙も掲載します。

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原題:任務細胞總部
(黃彬彬 編繪『機器貓小叮噹 218』青文出版社、中華民國81(1992)年2月25日出版)