青文ドラ第198巻に収録の「正直世界」を和訳しました。もしもボックスを使って、正直なことしか言えなくなる世界にする話です。


ジャイアンに言われてひみつ道具「もしもボックス」を出したドラえもんですが、ジャイアンがいなくなってからのうのうと「たいしたことできないよ」と言ってのける始末。それは道具の性能を甘く見ているのか、はたまたジャイアンを見くびっているのか……。真相はドラのみぞ知る。

今回、また新たなひみつ道具が登場しましたね。その名も「異次元世界バッジ」。『ドラえもん』で「もしもボックス」が登場するときは、たいていドラとのび太がそれを使用するため、もしもボックスを使用する際に自分たちを効果の対象外にすることはたやすいはず。鏡のない世界、たこあげのない世界にしたとき、ドラとのび太は自分たちを何気なく対象外にしていますからね。ゆえに自分たちを対象としたときの緊急用として用いるのが一般的な使用法なのでしょう。だって自分以外のだれかがもしもボックスを使用し、いつの間にか自分たちがその世界に入っていたなんて、普通はわかりっこありませんから。

スネ夫がドラに触られることを拒んでいるシーンがありますが、原文を直訳すると「肉球でさわるな。感染したくない」というセリフになっています。おそらくドラをネコ同然と見なし、そのネコに触られて得体の知れない病気にかかることをおそれていたのでしょう。しかしどう見てもドラの手は肉球には見えないので、肉球は「ゴムマリの手」と訳すことにしました。まあドラの手は肉球のようにやわらかそうではありますけどね。

また今回は、ドラのセリフをできるだけぶっきらぼうに訳すよう心がけてみました。テンション高めなこの作品にこそ、ぶっきらぼうなセリフが合うと思いますしね!
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(黃彬彬 編繪『機器貓小叮噹 198』青文出版社、中華民國80(1991)年1月24日出版)